MR流体入門
(MR流体と磁性流体との違いは?)

MR流体(Magneto Rheological Fluid)と磁性流体(Magnetic Fluid)とは異なります。

MR流体の研究開発、製造、販売を始めたのが1999年の後半頃でした。
その中でMR流体(Magneto Rheological Fluid)と磁性流体(Magnetic Fluid)が同一のものだと思われている方が多くおられます。
そこで、その違いを述べたいと思います。尚、かっこ内は比較の為、磁性流体について述べております。MFはMagnetic Fluid(磁性流体)の略です。

@MR流体とは?

灰色の液体(MFは黒)で磁石を近付けると引き寄せられる液体です。灰色は成分である純鉄の粒子(MFはフェライト)の色です。
容器に入れて下から磁石を近付けるとバラの花の様な形(MFは針状)になります。

A磁石との違いは?

MR流体の性質は磁石と異なります。
MR流体は鉄にはくっ付きません。純鉄の粒子が小さい為です。
しかし厳密に言うと非常に弱い力が残っていて鉄にくっ付こうとしますが 、その力は測定機器で調べないとわからないくらいです。(MFは全くくっ付きません。)

BMR流体の成分は?

MR流体の成分は大まかに言うと純鉄の粒子(MFはフェライト)と油(溶媒)でできています。
純鉄の粒子は小さくて直径が1〜10ミクロン(MFは0.01ミクロン)で丸い形をしています。この粒子の大きさの違いにより両者の性質が大きく異なるのです。
油としては主にポリアルファーオレフィンが使われています。

CMR流体の安定性は?

MR流体は長時間静置すると上層に少量の油が分離してきます(MFは常に均一)。
磁性流体と比べ粒子の大きさが100〜1000倍大きく、覆った有機物の反発力だけでは力が足りず、純鉄の粒子が沈降してしまいます。そこで他の添加物の力を借りて沈降しないように工夫しているのですが、どうしても油が分離してきます。

DMR流体の性質は?

MR流体に磁場を与えると硬化します。一方磁性流体は硬化しません。むしろ磁性流体は硬化すると回転軸のトルクが上昇して(回転させるのにさらに力が必要になり)使えなくなります。
では、何故硬化するのでしょうか?
MR流体に磁場を与えると成分である純鉄の粒子が鎖状のクラスターを形成し(粒子が数珠状に並ぶ事)、この事により硬化するのです。
Bで述べましたようにMR流体の純鉄の粒子が磁性流体の粒子より100〜1000倍大きい事、MR流体の純鉄の濃度も磁性流体よりもかなり高い事、MR流体の飽和磁化が600mTと非常に大きい事によります(MFA-08で78mT)。これらの事がクラスター(粒子が数珠状になったもの)をより強固に結びつけ、MR流体は硬化するのです。
このクラスターを引きちぎる為の応力を降伏せん断応力と言います。
又、この様にMR流体は粘度が上昇する事を利用しているので、低い粘度が求められる磁性流体とは異なるのです。

E比透磁率

MR流体の比透磁率は非常に小さくて2〜3程度です。(MFは1.5前後)

FMR流体の応用

MR流体は磁石と一体になって使用されます。
私が携わった事例を紹介します。

a.安全弁、ロボットからの安全確保
ボイラの直動式バネ安全弁は場合によって固着し作動しない事も考えられます。そこでその代わりに永久磁石によって吹出し圧を設定したMR流体安全弁の研究が行われました。
又、ロボットのアームが作業者を押しつぶそうとした場合、MR流体が降伏値以上になると純鉄粒子のクラスターが引きちぎられ、ロボットのアームが空回りして、、作業者の危険を回避するというもので、磁石として電磁コイルを使えば降伏値を自由に制御できるというものです。

b.ショックアブソーバー
自動車の4輪のサスペンションへの利用という事で研究が行われました。
従来のショックアブソーバーに比べ電流で制御できる為、スムーズで、切替時のショックがないなど有利な点が数多くあります。

G終わりに

a.数多くの特許が米国のあるメーカーから出願されており、MR流体の応用製品を開発するにあたっては、この特許使用料という事が開発に影響を与えている様です。
又、MR流体その物についても、数多くの特許が同様に出願され成立している特許もあります。
従って、MR流体の応用にあたっては、詳細に特許を調べる事が肝要と思われます。

b.クラッチの様にMR流体に強力な圧縮力を与えたり、ジュースミキサーの刃の様に強力なせん断力を与えるような応用製品は難しいようです。これらの力によってMR流体の構造が破壊される為と考えられます。

c.尚、弊社(株)M.F.Tech.では、現在MR流体の製造、販売は中断しております。

鰍l.F.Tech.
今井 利和
2010.7.17